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2013年7月17日 (水)

スピルバーグ映画「ミュンヘン」感想(非常に今更ですが)

 新しい更新は東映ベストアニメに割く予定でしたが、感動が薄れないうちにこれを語っておきたい。

 凄惨な描写がいささかあり、それが苦手な人にはオススメ出来ない。

 一言で乱暴な言い方するなら、「戦争は起こらない戦争映画」。
 つかみから「パレスチナ・ゲリラ、オリンピック選手村を襲撃!」と緊張感あふるるオープニングで、真面目な映画でも娯楽を忘れていないスピルバーグ監督に拍手。

 イスラエル選手団を皆殺しにしたパレスチナへの報復のためにイスラエルのモサドがテロ組織黒い九月(PLOが作った組織)幹部への暗殺部隊を結成する(それを決定するシーンに当時のイスラエルの首相が出て来る。女性。)。主人公のアヴナーを始め5人でチームが組まれて、まず一緒にめしを食うがそこが部隊メンバーの観客への自己紹介として完璧な出来。食事をちゃんと描いてる作品は映画に限らず、名作率高い。

 モサド暗殺部隊がPLOと鉢合わせするシーンがあって、とっさにアヴナー達は東欧の民族派ゲリラ(ちと記憶がおぼろげ)を名乗って衝突を避けます。
  PLOの若者が「あんたはユダヤシンパか」「国を失った悲しみはあんたらにはわかるまい」とユダヤ人とは知らず、アヴナーに語るシーンはよかったけど(ユダヤ人のスピルバーグがこれを語らせたのが大きいのだ)、もっといいのがPLOとモサドがラジオのチャンネル争いをするのがシュールで、どちらも笑っていた。その事に希望を感じた。映画の中じゃなく現実の世界に。
 しかし結局アヴナー達が黒い九月幹部を殺した現場を見られ、その若者は「貴様やはりユダヤか!」(こんな台詞ではなくそういうニュアンス)って感じで暗殺部隊に銃を向けます。その後その人がどうなったかちょっと覚えてません(汗)。

 爆弾制作担当の仲間が失敗の連続を仲間たちに責められ「オレは爆弾作りの専門家じゃなく爆弾処理の専門家なんだ!」と告白したのには失笑。ハッタリ吹いてたって事です。イスラエル政府はテキトーな人選するな(ダブルミーニング)。

 劇中でアヴナーは3回、象徴的な悪夢を見るんだけど最初の夢はゲリラがイスラエル選手団を問答無用で皆殺しにする夢でアヴナーは「パレスチナ許せん!」と思ったはずの夢。
 しかし二度目の夢はそれとはかなり違っていて、ゲリラは人質を殺しておらず、アヴナー達がゲリラを皆殺しにする…。だったような。すいません早くも記憶がおぼろげで観察力も自信ないので不正確です。どういう意味かも何となく感じたのはありますが自信無いのでパス。
 三度目は、暗殺部隊が今まで殺した犠牲者たちが何十人とかかってアヴナー達を殺そうとし、さしずめ戦争のような描写。私なりには、「オレは誰を殺したのかわからないくらい殺してしまった。いずれ誰もが俺を殺しに来るに違いない」との罪悪感と恐怖心だと解釈してます。

 これだけイスラエル国の為に粉骨砕身した(殺せば殺すほど心がボロボロになって行く)アヴナーに国家は何も報いなかったのが印象的。どこの国も政府はそんなものだと思ってしまいます。

 複雑で深い映画ゆえ、観終わって謎がかなり残るんだけど、最大の謎、なぜアヴナーは情報屋のルイとパパを裏切らなかったんでしょうか?
 ルイたちの正体は謎のまま終わったけど、パパはトンデモない極悪人なのではと感じる。ルイは「各国政府の人間でなければ情報をよこす」と言っており、その意味ではイスラエル政府の命で動いていたアヴナー達は最初からルイを裏切ってる。
 しかしアヴナーは暗殺部隊に情報を売っていたのが誰かを、政府に明かさない。上官から「イスラエル軍人ならイスラエルに忠誠を誓え!」と迫られてもバラさない。それが何故かは私には読めませんでした。

 ラストシーン、アメリカに移住したアヴナーが上官に「あなたは遠来の客だ」と表現するのは「俺はもうイスラエル人ではない(色んな意味で)」ということだと理解してますがどうでしょう。

 正義を語りながらイスラエル側にもパレスチナ側にも与していない。それをユダヤ人がやったのが凄い。スピルバーグは「シンドラーのリスト」で「あんたはやっぱりイスラエル寄りか」と思われていたのを払拭してみせた。この映画イスラエル政府は作ってほしくなかったろうけど、パレスチナ人の目から見ても気持ちのいい映画ではないでしょう。

 スピルバーグ監督において「シンドラー」は自身がユダヤであることに「甘えた」作品と思ったが(私的にシンドラーは駄作なので)、「ミュンヘン」はユダヤ人であることの意味を自身と世界に「問いかけた」作品と評価します。今更ですが、「E.T.」や「ジョーズ」を撮ってた頃から別人のように化けたよ。似た路線と思われる「プライベート・ライアン」「リンカーン」も観たくなりました。

 「レインマン」「ギルバート・グレイプ」「グリーンマイル」の系譜に属する「米産感動大作映画」と位置付けることが出来、「なぜ日本人にコレが作れないのか!」と思いますがあちらはあちらで「なぜハヤオ・ミヤザキのようなアニメーションがアメリカ人に作れないのか!」と思ってるかも。

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