「風立ちぬ」感想(ネタバレ)
イデオロギッシュでナンセンスな批判があまりにも多すぎる!
煙草を吸うシーンが多すぎて、特に結核の嫁さんの前で吸うなだの、戦争描写が甘いだの、菜穂子は男に都合がいい女性像で、それが美化されてるだの、日の丸が多すぎる(笑)だの…。
私自身は左翼だけど、ああいうしょうもない批判をするから左翼は馬鹿にされるのだと痛感した。
宮崎監督は戦争体験者として嘘をつかなかっただけだと思う。現代人の価値観に媚びず、おもねらず、当時はこうだったのだと。
「美化している」との批判は、いや、価値観はどうあれ美しかったものは美しいのだと考える。例えば特攻隊員の死に赴く時の表情はとても美しかったはずです。特攻隊思いついた奴は人間のクズだが。
あと、夢を実現するのってきれい事じゃないんですよ。競争に勝たねばならぬって意味でもありますが、他人の思いや願い、時として命をすら踏みしだいて行く覚悟がなければ叶えられない。それをわからずに堀越二郎を戦争協力者呼ばわりするのはズレてると思う。
ジブリの公式サイトで護憲論を載せるほどの左翼である宮崎監督がこういう映画を撮った意味、意義をもっと考えた方がいい。私も考え中。
皆さんそう思ってるでしょうがキャストは最悪です。よりによってなぜ庵野さんに頼んだのか。庵野さんなら監督として演出する事と演技するコトの違いは宮崎さん以上にわかってると思うのですが、宮崎監督と仲がいいのでほだされちゃったんでしょうね。
あと、ちょっとイデオロギッシュになっちゃうけどカストルプ(二郎がホテルで会ったドイツ人)の声優は日本語ができるドイツ人を探して演らせた方がよかったと思う。「ナチスはならずものだ」とアメリカ人声優が喋るのは当たり前すぎるんです。
始まりでの関東大震災の場面とラストで東京大空襲の焼跡のシーン(8/24追記・空襲そのものを受ける場面はない)はセットで凄惨だと感じました。やはり東日本大震災を経験した後だからこその表現なのでしょう。
面白い評価なのは「これはモノ作りを生業としてる人にとっては堪らない作品」との指摘は良かった。「サバの骨」は素晴らしい表現だった。ただ、「モノ作りとラブストーリーのバランスがよくない」との批判も当たってると思いました。
ラブストーリーと言えば、二郎と菜穂子が恋愛結婚なのは時代描写でただ一つの嘘かと捉えてましたが、両親に聞くと「戦前でも恋愛結婚はそれほど珍しくはなかった」と聞きました。戦前はほとんど見合い結婚かと誤解してました。宮さんすみません。
あと、何で文金高島田じゃないんだろと母に聞いたら「それって準備にものすごく時間がかかるものなんだよ」と言ってました。でも宮崎さんが文金高島田を美しいと思わなかったのでああなったとの勘ぐりを捨てきれないのですが、穿った見かたなのでしょうか?
結婚式(といっても二郎が特高に目をつけられてるので4人しかいないのですが)仲人を引き受けた黒川夫妻が口上を述べるのは面白かった。楽しい風習があったのですな。
でも、震災の時助けてあげて、名前も名乗らず別れた女の子と偶然軽井沢で出会って、恋に落ちるなんてのはご都合主義の大嘘ですけど(笑)。
子供向け映画ではないとちょっと思ったが、子供は子供なりに難しい作品の意味を理解するのだと後から考えました。にしても宮崎さんが初夜を描くとは!
二郎とカプローニさんが夢の中で何度も出会うのは、宮さんらしいファンタジーできれいでした。
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コメント
僕もようやく見てきましたので、Ivanさんのエントリを読ませていただきました。自分のブログにも書きましたけど、結構面白かったですね。結局パンフレットも買ってしまいました。
僕も当然戦争反対論者ですし、戦争を美化することにも反対ですけど、この映画からはそういうイヤな意図は感じませんでしたねぇ。これが戦争を美化していると解釈する人は一体何なんだ。
結婚式のシーンも良かったですね。ついつい課長に感情移入してしまって泣きそうになりました。あの辺の演出は見事。
投稿: yukkun20 | 2013年10月 5日 (土曜日) 午後 10時11分
>これが戦争を美化していると解釈する人は一体何なんだ。
考えずに表層的に解釈するからそうなっちゃうんですよ。かなりよく考えないと、この作品の真価は分からない。宮崎監督は「お前らちゃんと考えろよ!」と最後の一発をかましたのでは。私がちゃんと考えてるとは言いません。ただ、考え続けてます。
>結婚式のシーンも良かったですね
ムカシを知ってるヒトならではのシーンでしたね。
投稿: Ivan | 2013年10月 5日 (土曜日) 午後 10時45分