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2016年7月31日 (日曜日)

「キングスグレイブ ファイナルファンタジー15」感想(ネタバレ)(辛目)

 映像、演出は素晴らしく、ハリウッドのお株を奪っており、邦画の最高峰と感じました。しかし、シナリオとキャラクター、特に主演2人の演技は残念でした。
 そして、ファンサービスは満点でした。

 FFの映画は15年前のも、7アドベントチルドレンもその印象ありましたが、今回も「アニメとも実写とも違う」映画でした。厳密に言うならCGアニメーションなのでしょうが、FF映画をアニメと言うのは初代作から抵抗ありました。
 と同時に、初代ともアドチルとも違う、今までにないタイプの映画とも思った。

 まず、FFは1からすでに映像美を売りにしてて、それが7からポリゴンによる「リアルで映画的な映像」路線を採ることにしたのが、そもそもFFが映画になるきっかけです。
 「FFとリアル」の問題はあまりに難しく、私の頭では語れないのでこの記事を参考としてほしいですが、私に言わせれば、FFが映画を目指したのは全く正しかったし、今でも正しいと確信してます。
 FF生みの親、坂口さんは「映画的な面白さではゲームは映画にかないません」と過去にゲーム雑誌で発言したのを、よく「嘘つき」「自分で言ったことを忘れてる」と揶揄されますが、坂口さんがそれ言ったのはファミコンの頃であり、技術的にポリゴンやムービーなど到底考えられない時代。それがPS1になって「映画的面白さ」がゲームでも可能かもと思えた、その変化を考慮に入れずに発言のみをもって坂口さんをDisるのはアンフェアだし、そこをつつく人を軽蔑します。

 ここからネタバレ。

 冒頭から戦闘シーンがあり、ベヒーモスやケルベロスといったおなじみのモンスターたちと主人公たち人間が戦うのはFFらしい「戦争」だと感じました。ダイヤウェポンが出たのには驚いた。FFとして本気で作られたのだと。
 魅力があるのはスペクタクルシーンだけではなく、国王と重臣たちの会議や主人公たちのなにげない日常もしっかり引き込まれる映像になってます。映画として肝心なこと。

 王都を守るバリアが「魔法障壁」とFF12の用語だったり、「魔法文明に守られた王国と機械技術によって侵略戦争を繰り返す帝国」の設定、零式だよねw。もともと15と零式(と13シリーズ)は世界設定を共有してるはずなので、そこは自然なことかもしれませんが。
 全体的に「スター・ウォーズ」や「ドラゴンボール」を想起しやすい作品です。FFっていろんなSFやアニメから影響受けてますが、今作、特にこの2つの影響は顕著。
 王都が相当「ミッドガル」(7の大都市)らしかった。中央部は整備された町並みで、裏通りはゴミゴミしてる下町なのはまさに。ところどころにファンならわかる小ネタが仕込んである。

 シナリオ、とてもプロの脚本家(ゲーム畑の人ではない)が書いたものとは…。アドチルに負けている。厨二臭いのはいいとして、王国と帝国が対立してる理由すら明確にされてないのは。王国が帝国に不審を抱いてたのに、あっさりとクリスタルを奪われちゃうのもなあ。
 FFファンでない人にいろいろ説明不足です。特にナイフを投げた先に瞬間移動できたのはゲーム(エピソード ダスカ)で知ってたといってもかなり唐突だったので、面食らった。あれはなんとかならなかったか(「NARUTO」かよ!と感じた人も多いはず)。
 評価できるところ、主人公が指輪をはめて「オレはアンタら歴代の王たちに文句を言いに来ただけだ」のくだりはよかった。野島一成さんに学んでるFFらしい一幕。

 キャラクターに魅力が欠けた。主人公とヒロインの演技はひどく、特にヒロインはなぜかゲームとキャストが違い、わざわざそれやって失敗したのかと。映画業界の因習があったのかも知れない。主人公役の方は、自らを「声優としてのキャパシティが足りない」「底辺声優」と自己評価しており、それにFFをとても深く理解していて、演技とは別の面で好感持てました。しかし結果論とはいえ、そう自分を客観的に見られる俳優をなぜ起用したのか…。
 強いて魅力的だったと言えるのは、レギス国王とイドラ皇帝、アーデン宰相でした。これは中の人に助けられてる。細かいことだけど、一国の王が他国の皇帝を「陛下」の尊称で呼ぶのはちょっとおかしくない?女性キャラが少なかったのも疑問だな…。
 モーションアクターをイギリスに頼んだのは正解でした。イギリスはいち早くスタニラフスキー・システムを取り入れた演劇先進国で、おかげで動きに不自然さが少なかった。

 最大の不満点、それは最後にダイヤウェポンと召喚獣が戦うカタストロフシーン、王都が壊滅してるのに、逃げ惑う群衆もおびただしい死体も描かれなかったこと。これははっきり言って、3.11からなにも学んでないと言わざるを得ない。
 実はFFに同様の不満を覚えたのは初めてでなく、FF6の終盤で「世界崩壊」したときも「なぜ名も知られぬ人の死がちゃんと描かれないんだろう?」と子供心におかしいと思った。他にも同様の疑問を持たせるシリーズ作はいくつもありました。当時は技術的な問題もありましたが、今ではそんな言い訳は許されない。これはFFが改めなければならないポイントではないかと。
 召喚獣とウェポンの戦い、王都が破壊されるシーンそのものは気持ちよかったからこそ、なおさら問題なのです。

 まとめると、映像がスゴく気持ちよかった、という娯楽映画としてよかった作品でしたが、物語のつまらなさと、カタストロフをきちんと描かなかった倫理面で、問題がある映画でした。採点すると、10点満点で9点。良くも悪くも「FF」なので、ファンなら観る価値は大きい作品です。

 無論、スタッフロールのスペシャルサンクスに「HIRONOBU SAKAGUCHI」「NOBUO UEMATSU」とあったのを見逃すあっしじゃありやせんぜw。

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